L'art fantastique/      幻想芸術

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『黒の美術館その1』

「ルドンの黒」展              長島 充

ルドン1

 2007年8/24 先週末、酷暑が一日だけゆるみ仕事のくぎりがよかったのでひさびさに都内の美術館めぐりをした。

始めに向った先は渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「ルドンの黒」展へ。
オープン前からずっと行きたいと思っていてようやく見に行くことができた。

ヨーロッパの幻想絵画の系譜の中でもっとも影響を強く受けた画家を5人あげなさいと言われれば北方ルネサンスのヒエロニムス・ボス、ペーテル・ブリューゲル、時代を下ってウイリアム・ブレイク、現代のエルンスト・フックス、そしてこのオディロン・ルドンである。
20代から精神的にも技術的にももっとも影響を受けてきた「幻視者」ということになる。特にブレイクとルドンは版画制作が中心であった僕は強く影響を受けた。

ルドン3

会場に着くと中はひんやりとして心地よく真夏の都内は美術館めぐりに限る。
予定より遅く起きて11時過ぎに着いたので混雑を心配したが
意外にも空いていた。

ルドンの銅版画の師匠でありこれも僕の大好きな版画家ロドルフ・ブレスダンから影響を受けていた初期エッチング作品から始まり「夢の中で」「エドガー・ポーに」「起源」「聖アントワーヌの誘惑」などなど・・・石版画集の名作がずらりと並ぶ。いずれも深く内面にうったえかける光と闇のモノクロ表現で溜め息が出てしまう。
19世紀のパリと言えば版画芸術と版画入り挿画本の隆盛期である。

ルドンの生きた19世紀のパリは印象派と同時代。モネの「睡蓮」やゴッホの「向日葵」と同時代になぜこのようなオリジナリティーの強い特異な幻想表現が生まれたのだろうか?
それは彼の孤独な生い立ちや放浪の銅版画家ロドルフ・ブレスダンとの出会い、ルネサンス絵画や東洋美術からの影響、ポーやボードレールなど西洋の闇の文学世界への傾斜、そしてダーウィンの「進化論」、微生物学者ルイ・パストゥール、植物学者アルマン・クラヴォーといった同時代の生物学者からの影響がうかがえる。

つまり当時の現代美術の中心的存在であった印象派の画家たちが外光と色彩の分析を科学していたこととは全く異なる世界観や自然への視点、画家としての資質を持っていたのだ。
今回「黒」がテーマの展示で他に木炭画が展示されていたがこれがまた良かった。石版画の印刷インクで刷られたハイコントラストの調子とは違って限りなく柔らかい灰色を見ることができた。ルドンは黒に色彩を感じさせることができる数少ない画家である。

ルドン2

最後のほうの部屋に数は少ないが油彩による風景とパステルによる花の作品が展示されていたがここにも黒の世界で会得してきた豊かな色の諧調を見ることができた。

ルドンは50歳代半ばまでストイックな黒の世界を木炭画や版画の世界に追求し続けた。
そして油彩やパステルなどの色彩世界を本格的に制作し始めたのが60歳を超えてからというのだから驚嘆する。
しかし改めてこの黒の世界を俯瞰してみるとすでに石版画の黒に埋没していた頃からこの画家の内面には晩年の色彩へと繋がっていくプログラムが用意されていたのだろうと感じる。

会場をでてグッズ・ショップに立ち寄ると長らく絶版となっていてプレミアムがついていた名著の「私自身に」(みすず書房)がこの秋に再刊されると書かれていた。画家自身の自叙伝でルドンの内面世界を知りたい方にはお勧めの1冊!!

最後にこの200点に及ぶコレクションは全てルドンのコレクションで世界的な名声を誇る岐阜県立美術館のものだという。「よくぞ集めてくれました!!」と拍手を送ります。

「ルドンの黒」展は今度の26日(日)までまだ行かれて無い方はぜひ足を運んでいただきたい展覧会です。

画像上から1914年のルドンのプロフィール写真、R・ワーグナー楽劇より石版画「パルジファル」、石版画集「ギュスターブ・フロベールに」より「死神」。

黒の美術館はこの後、目黒に移動しその2に続きます。
               
               (執筆者:長島充/画家.版画家)

付記:当稿は昨年より長島充氏によって、私的に書かれた版画家達へのオマージュセリの再録である。セリ全篇の転載許可を得て、当Blogにて不定期連載していく。
                 
              
photo by gradiva.inc - -
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