L'art fantastique/      幻想芸術

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内外幻想芸術紹介とレヴュー。
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クロード・ベルランド/Claude Verlinde 訪問記(3)

 世界の幻想芸術界では、ウィーン幻想派というグループ総称を廃し、今日日エルンスト・フックス/Ernst FuchsとH.R.ギーガー/HR Gigerの令名のみ高らかとなっている昨今である。が、実は幻想芸術界の真の最長老はクロード・ベルランドであると言って差し支えない。個人主義に偏し、党派を好まぬパリを拠点とし、しかも職人気質のベルギー人であるベルランドは世に容れられぬ時代が長く続いた。  

 ウィーン幻想派を世界に先駆けて逸早く評価したのも日本であれば、クロード・ベルランドに就いてさえ、そうだと言える。余談だが、60年代パリに打って出たエルンスト・フックスですら、ユダヤコミュニティーを使ってもサルバドール・ダリ/Salvador Daliをホテル・ムーリスに訪った以外捗々しい成果を得られず撤退したパリである。フックスもギーガーもダリの後追いだが、フランス学士院の席を虎視眈々と狙いつつ、今だ切歯扼腕のプロフェッサー・フックスなのだ。今のアカデミーフランセーズは、パリ美術大学閥がお手々繋いで支配している。華の都パリはコスモポリタンの都であるように見えて、実は外国人に厳しい(それほどEUに腹這っている歴史的背景は根が深いともいえる)。
 まして幻想芸術は、シュルレアリスム発祥の地でさえ冷遇され続けるアンドレ・ブルトンその人とその運動がそうであるように、今だ鬼子扱いなのである。最もそれはパリだけに限らぬが。

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(参考:エルンスト・フックス作品画像)

 年功序列という訳ではないが、御歳82歳のクロード・ベルランドが最長老として遇されるのは、デンマークやオランダ、ドイツで発行されている現代幻想芸術画集の筆頭に頁を占めていることが証左。そのことを踏まえた上で、訪問記を継ごう。

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 「大仕事が入ってて、座る場所もないんだ」そう言い乍ら立ち話も何だからと、アトリエに招じ入れられた我らの前に、梯子のような中二階への階段が迫る。階段に添った壁に2枚の大きな芸用解剖図が貼られている。何処か理科教室のような印象で、左手の吹き抜けらしき部屋の巨大なイーゼルに、テーマ部分のみ出来上がっている300号のパネルが掛かっていた。「大作ですね」、そう私が感嘆の声を洩らすと、「こんなものはほんの一部だよ」といって驚くには当たらないといったジェスチャ。訊けば縦6m、総延長15mの超大作の受注が来ていて、日々この大仕事に励んでいるのだという。

 右手の、本来ならば書斎件リビングとなっている小部屋の中に迄、地塗りしたパネルが、所狭しと5,6枚戸板のように重ねて立てかけられていた。傍らの窓に面したデスクには、私達細密画家に親しい絵筆や、BLOCKX社製の少量の絵具が、ガラスのパレットに捻り出されていて、大作とは正反対のミニアチュールも描いている形跡があった。そこは小部屋といっても天井が高く、東向きの全面曇りガラスの窓の為、矢張り理科教室か実験室の印象がした。そのモダンな印象にも拘わらず調度はクラッシックであり、戸口の上には複数の蝙蝠の剥製や博物図、骨格見本、北側の飾り戸棚の上には、18世紀のものと思しい操り人形二体が天井から吊られ、奇妙にカーニバレスクな雰囲気を醸し出していた。
 標本と思いきや、モチーフと思しき鶏の骨格標本に人間の骨格模型が跨がっている。ベルランドお手製の首の人形オブジェは、実物の顕微鏡を覗きこんでいる。骨董やフェイクの創作物が渾然として、資料書籍、額装されたデッサン、旧作か新作かも見分けられぬ小品が整然と壁を埋め、そこはクロード・ベルランドの絵の世界が3Dになったかのようである。大作関連で狭小になっておらねば、ブンダーカンマー(驚異の部屋)そのものの佇まいであったろう。イマージュの全てが発生する現場は、是非斯くありたいものだ。なんとも羨ましい。荒れ果てた私のアトリエもそうせねばならぬ。激しくそう私に迫る思いが生じた。

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 ユーグが土産話に本年5月のIFAA展の際の日本旅行の写真や、文化庁からやっと来た手紙などを示し乍ら、立ち話を続ける内、来客のベルが鳴った。年配の助手氏である。互いに皆挨拶を交わし、ユーグのフランス文化庁の手紙の件で三人延々と政治の話へ。ああ、始まってしまったな、パリジャンが三人寄ると必ずといっていいほど政治批判で盛り上がる。

 「政権が変る度、毎回文化庁に手紙を書かねばならん。私もサルコ(サルコジ批判では皆この渾名を使う)にまで手紙を書いたよ。木っ端役人から上に上がっていくまで、何れだけ手紙を書かされるか分からん。」とベルランド。「えっ、先生でも?僕も全く梨の礫だったんですけど、何ヶ月も繰り返し書いて、やっと初めて返事が来たんです」と喜色満面に語るユーグ。「君は頑張っているな、期待してるぞ」と先生。「サルコは商売にばかり熱心で、ちょっとも文化になんかに関心がないんだ」と助手氏。「政権に関わりなく何時も同じ抽象の連中ばかりが優遇されて、奴らは文化マフィアみたいなもんだ。スーラージュなんて×××。あんなカーテン屋の絵が×××。」とベルランド先生怪気炎。危うくて全て披露できない。

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 時あたかもポンピドーセンターでピエール・スーラージュ/Pierre Soulagesの大回顧展が鳴り物入りで開催されて居り、90歳で先輩格のスーラージュながら、舞台美術上がりと揶揄を込めての批評と思しい。悪口でもエスプリが利いている。因みにピエール・スーラージュは田舎出だが生粋のフランス人。国籍差別が滲み出る。確かにボーブール(ポンピドーセンター)は何時行っても卑近な流行の新しい墓標が並ぶ、何やら物悲しい場所ではあるが。
 彼等の話を要約すると、パリ郊外、休眠中のシャトー・フェリエール/Le Château de Ferrièresの「幻想美術館」をレジデンスとして解放し、国際展を行えるだけの文化助成をして欲しい。たったそれだけの、ささやかな願いのために皆でユーグを後押ししているという図。今のシャトーフェリエールは、管理役人が別荘代わり住んでしまって、ほとんど本来の機能を果たしていない、ユーグが搬入に行ったら連絡していたにも関らず、留守で仕方なく出直したとか、門外漢の私が聞いているだに嘆かわしい事態なのであった。そういう管理人のほとんどが、わざわざ待っていたのにお前が来なかったとか出任せを言って誤摩化すのが常。まして役人では慇懃無礼な姿がまるで目の前に見えるかのようだ。フランスってそんな国なんだよな! 過去に私が見舞われた迷惑事を思い出し、内心妙に同情していた。

 因みにシャトー・フェリエールhttp://www.chateauferrieres.com/はロッシルド(ロスチャイルド)家/Fondation Marie-Hélène et Guy de Rothschildの所有だが、節税対策でその一部、即ち「幻想美術館」/ "Musée de l'imaginaire"をメセナとして国に供し、本来であれば幻想芸術家に発表の機会を与え、広く世に紹介し育成する機関としての役割を果たさねばならぬ筈なのである。


(4)に続く

付記:

 最近入院し、健康不安説なども流れたプロフェッサー・フックスであるが、事なきを得たようである。大作をいうならばエルンスト・フックスも500号クラスの新作や目下大壁画を製作中である。その、老いに負けぬ体力勝負の仕事への邁進振りは、絵描きの鑑以外の何ものでもない。フックスに教えを乞うた世界中の無数のミッシュテクニック(テンペラ・油彩混合技法)の弟子たちが大変心配していた模様である。ミッシュテクニックによる幻想芸術世界学校構想、更にはAOIの成立、インターネットによる幻想芸術世界リンクの大きな礎を作った氏の功績は、矢張り掛替えがない。大事にしてもらいたいものである。


               田中章滋 識/by Shoji Tanaka
photo by gradiva.inc - -
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